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パブリック債券

投資機会が変化する中でも、ハイイールド市場への前向きな見方を維持

2026年7月 – 5 分 レポートを読む

ハイイールド債券およびローンは、堅調なファンダメンタルズと旺盛な需要に下支えされており、スプレッドは引き続きタイトな水準にあるものの、魅力的なオールイン利回りにより投資家の関心を集めています。一方で、銘柄間のばらつきは拡大しており、規律ある銘柄選択および質の高い投資機会への選別がこれまで以上に重要となっています。

ハイイールド市場は、強固な需給環境と予想以上の回復力を示すマクロ経済環境を背景に、堅調に推移しています。需要が供給を上回る状況が続いており、経済や地政学を巡る不透明感が続く中でも、市場のバリュエーションを下支えしています。

良好な需給環境はパフォーマンスを支える重要な要因となっており、スプレッドを歴史的に低い水準に維持するとともに、当資産クラス全体の安定性をさらに強固なものにしています。

また、経済環境は多くの市場参加者の想定以上に底堅く推移しています。  

  • 米国では、堅調な個人消費や、特に AI 関連のインフラへの継続的な設備投資、概ね安定した労働市場に支えられ、底堅い成長を維持しています。
  • 欧州経済は短期的には回復力を示しているものの、競争力や製造業を中心とした需要動向については、引き続き中長期的な観点から注視が必要です。

マクロ環境を巡るリスクは依然として存在するものの、市場への影響は徐々に弱まりつつあります。インフレやエネルギー価格への懸念は幾分和らいでいます。原油市場は依然として地政学的要因に敏感である一方、状況は改善しています。金融政策の見通しも、より均衡の取れたものとなっており、年初に比べて追加利上げ観測は後退しています。このような環境の中、ハイイールド債券およびローンは引き続き良好な支援材料に支えられています。

ファンダメンタルズは底堅いものの、銘柄間のばらつきは拡大

ハイイールド市場のファンダメンタルズは依然として堅調です。企業はインフレの長期化や借入コストの上昇といった課題に概ね適切に対応しており、デフォルトは主に個別企業特有の問題に起因しています。平均デフォルト率は過去の平均並みの水準であり、ディストレスト比率からも市場全体に広がる信用不安の兆候は限定的なものとなっています(図1)。

このような底堅さの背景には、ハイイールド市場の質的な改善があります。現在のハイイールド市場は、過去と比べてBB格発行体の割合が大幅に増加しており、市場環境の悪化に対する耐性が高まっています。

図1: ディストレス比率は、市場が大規模なデフォルトの発生を織り込んでいないことを示唆

Figure 1: Distress Ratio Indicates the Market is not Pricing in Significant Default Activity出所: ICE BofA Developed Markets Non-Financial High Yield Constrained Index (HNDC)、UBS 2026年6月30日現在。額面ベースのデフォルト率は、米国のデフォルト率(75%)および欧州のデフォルト率(25%)を用いて算出

市場全体は安定している一方で、銘柄間のばらつきは拡大傾向にあります

  • 欧州では、化学や産業関連セクターを中心に、中国勢との競争が激化しているため、長期的な収益力の低下が懸念されています。建設関連分野には回復の兆しが見られるものの、その水準は依然として低く、先行きの見通しは不透明です。
  • 米国では、一部のセクターで構造的な課題が顕在化しつつあります。ケーブル・セクターでは、固定無線アクセスや光ファイバー網の拡大、新技術との競争激化により、長期的な成長期待が見直されつつあります。また、ソフトウェア・セクターでは、AI導入が企業の競争力や収益性に与える影響について、不確実性が依然として高い状況です。

リファイナンスの動向についても、発行体ごとにばらつきが広がる可能性があります。市場では、2028年に償還を迎える債務への注目が高まっているものの、良好な資金調達環境を背景に、発行体が積極的に借り換えを進めているため、いわゆる満期の壁に対する懸念は徐々に和らいでいます。実際、グローバル・ローン市場における2028年償還のローン残高は、過去1年間で約半分にまで減少しました。今後も市場環境は引き続き良好であり、この傾向が継続する可能性は高いとみられます。

図2: リファイナンス・リスクは依然として管理可能な水準

Figure 2: Refinancing Risk remains manageable (Global Loan Maturities, % of Market)出所: S&P UBS Global Leveraged Loan Index 2026年6月30日現在 

需給環境が引き続き市場を下支え

良好な需給環境は、引き続き根強い需要超過によって支えられています。 

世界的に旺盛な投資家需要を背景に、新規発行された債券やローンは市場に順調に消化されています。特にローン市場では、CLO(ローン担保証券)の組成が引き続き需要を支える主要な原動力となっており、格付け全般にわたってスプレッドをタイトな水準に維持する要因となっています。

スプレッドが拡大する局面では、概ね旺盛な投資家需要が見られました。これは、投資待機資金が豊富に存在する一方で、新規供給が限定的であることを反映しています。こうした需給環境は、当面の間、スプレッドの継続的な拡大を抑制すると考えられます。

図3: CLO需要は引き続きローン市場のテクニカル要因を支える主要因

Figure 3: CLO Demand Remains a Key Driver of Loan Market Technicals出所: J.P. Morgan。CLO発行額は新規発行のみを集計し、リファイナンスおよびリセット取引は除外。CLO ETFには年初来で60億米ドル超の純資金流入が持続。2026年6月30日現在

この旺盛な需要環境は、テーマ性の高い発行案件の増加も十分に吸収してきました。その代表例が、AIインフラ投資に関連するデータセンター向けファイナンスの急速な拡大です。この分野には多くの資金が流入していますが、長期的な需要見通しや残存価値の評価、技術革新に伴うリスクなど、新たな引受上の課題も生じています。

こうした複雑な要因が存在するものの、市場の需給環境は引き続き良好な状態を維持しています。新規供給が限定的であることから、投資家がより選別的な姿勢を強める中でも、ハイイールド市場全体のスプレッドやバリュエーションを下支えしています。

変化する投資機会

こうした環境のもと、ハイイールド市場における投資機会は変化してきました  

スプレッドが既にタイトな水準にあり、市場全体の上昇余地が限定的となるなか、リターンの源泉は、インカムの獲得と銘柄選択に左右される傾向が高まっています。市場全体のベータに依存するのではなく下方リスクを回避することが、パフォーマンスを左右する重要な要因となってきています。

こうした環境下において、投資機会はますます以下の要素によって左右されるようになっています。  

  • 高いインカム収益の獲得機会を提供するとともに、下落局面における耐性の高さが期待される、BB格の債券・ローンを含む、より質の高いクレジットへの重点配分
  • 慎重な銘柄分析と発行体別評価が不可欠となる、個別性の高い低格付け銘柄への選別的な投資
  • バリュエーションが割高で投資判断の余地が限定的となっている、B格セグメントに対する慎重な姿勢

セクターごとの環境にも変化が見られています。 エネルギー・セクターは堅調なパフォーマンスが続いてきたものの、相対的な投資妙味はやや低下しています。一方で、包装材関連や一部の消費関連セクターなど、原材料コストの安定化や改善の恩恵を受けるセクターは、よりバランスの取れたリスク・リターンの投資機会が期待されます。

AIは引き続き有望な投資機会であると同時にリスク要因でもあります。コンピューティング・インフラへの需要は明確に拡大していますが、持続可能なビジネスモデルを有する企業と、期待先行の投機的な投資対象との見極めが一段と重要になっています。 

ハイイールド債券 vs ローン:相対価値の変化

ハイイールド債券とレバレッジド・ローンはともに魅力的なインカム収益を提供していますが、両者の相対的な投資価値には差が生じ始めています

  • ローンは、特にCLOによる需要を背景とした強い需給環境と魅力的なインカム収益の恩恵を引き続き享受しています。一方で、その旺盛な需要によりスプレッドは大幅に縮小しており、現在の水準から期待できる追加的なリターンの余地は限定的になっています。
  • 一方、ハイイールド債券はよりバランスの取れたリスク・リターン・プロファイルを提供していると考えています。デュレーションは約3年と比較的短いため、金利見通しが引き続き落ち着きを見せるシナリオでは、債券価格上昇の余地が見込まれます。追加利上げのハードルは市場コンセンサスが想定するよりも高いと考えています。特に、インフレ率は当面のピークに達した可能性があり、その場合、デュレーションがリターンの下支え要因になると考えています。

その結果、相対価値の観点から、現在はハイイールド債券の方がより魅力的な投資機会を提供していると考えています。 特に質の高いセグメントでは、魅力的なインカム収益を確保しながら、価格上昇の恩恵も期待できます。一方、ローン市場における投資機会は、ますます発行体ごとの個別要因に左右される傾向が高まっています。

今後の見通し

ハイイールド市場の見通しは全体的に良好であるとみています。底堅い経済成長、健全な企業ファンダメンタルズ、およびクレジット資産に対する旺盛な需要により、強固に下支えされると見ています。

もっとも、現在のタイトなスプレッド水準は、セクター、地域、および個別発行体間で生じているばらつきの拡大を見えにくくしている可能性もあります。リファイナンス・リスクが高まり、一部の業界では構造的な課題が顕在化する中、投資判断における許容余地は徐々に縮小しています。  

このような環境下では、投資成果を左右するのは市場全体の方向性を予測することではなく、規律あるファンダメンタルズ分析に基づく銘柄選択です。リターンの獲得には、魅力的なインカム収益を確保するとともに、相対的に割安な投資機会を見出し、潜在的なリスクが表面化しつつある発行体を回避することが重要です。

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Headshot of Scott Roth smiling at the camera.

Scott Roth(スコット・ロス)、CFA

グローバル・ハイイールド責任者
Headshot of Chris Sawyer smiling at the camera.

Chris Sawyer(クリス・ソイヤー)

欧州ハイイールド責任者

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