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パブリック債券

CLO:より厳選された投資機会

2026年8月 – 4 分 レポートを読む

CLO(ローン担保証券)を取り巻く環境は依然として良好であり、堅調なファンダメンタルズや旺盛な需要、魅力的な収益機会が市場を支えています。一方で、スプレッドの縮小に加え、担保資産のパフォーマンス格差が拡大していることから、今後は銘柄選択やマネジャーの規律、ポートフォリオ構築がこれまで以上に重要になると考えられます。

CLOを取り巻く環境は引き続き良好です。インフレや金利、地政学を巡る不透明感が継続しているものの、堅調な企業業績とインカム収益を重視する投資家からの安定した需要を背景に、クレジット市場は底堅く推移しています。このような状況下において、変動金利を通じた魅力的なインカム機会、堅固なストラクチャーによるダウンサイド保護、ならびにシニア担保付ローンへの分散投資という特性により、CLOの投資魅力は引き続き高いと考えています。

市場環境は堅調に推移している一方で、市場では選別が一段と強まっています。バリュエーションはタイト化しており、新規CLOの組成は依然として限定的で、発行の大半をリファイナンスやリセット案件が占めています。その結果、投資家は既存ポートフォリオの評価にこれまで以上に時間を割いています。こうした既発案件では、担保のクオリティに大きなばらつきが見られ、投資成果は市場全体の方向性よりもむしろ銘柄選択に左右される傾向が強まっています。

CLOは引き続き魅力的なキャリーを提供していますが、信用力やセクター、ビンテージにおけるばらつきは今後も拡大した状態が継続する見込みです。このような環境下では、慎重なクレジット分析とマネジャーの選別が、今後の市場環境を乗り切る上でこれまで以上に重要になると思われます。

ファンダメンタルズ:底堅く推移するも銘柄間格差は拡大

CLO裏付け資産となるローン市場のファンダメンタルズは、総じて安定的に推移しています。米国および欧州ではデフォルト率が緩やかに改善しており、クレジット市場全体のパフォーマンスも多くの市場参加者の予想を上回る底堅さを示しています。

一方で、リスクは発行体およびセクター毎に異なる傾向にあります。 市場では、財務基盤の強固な借り手と、流動性の圧力やリファイナンス・リスク、あるいは構造的な逆風に直面している借り手との間で、選別が一段と進んでいます。

ソフトウェア・セクターは、こうした格差拡大を最も明確に示す例の一つです。

  • AIによる変革(ディスラプション)の進展を受けて、特にソフトウェア・セクターがローン市場において大きな割合を占める米国では、CLOポートフォリオにおけるソフトウェア関連エクスポージャーへの注目が再び高まっています。
  • 投資家は全体像を捉えるのではなく、個別企業のビジネスモデルや競争優位性、ディスラプション・リスクの可能性を慎重に評価する傾向にあります。
  • ポートフォリオがソフトウェア関連のエクスポージャーをどの程度有しているかではなく、どのソフトウェア企業に投資しているかが重要となっています。

全体として、最近の個別企業固有のクレジット・イベントや、セクター間のパフォーマンス格差の拡大は、リスクが特定の分野に集中しているわけではないことを示唆しています。ソフトウェア・セクターは依然として最も注目される領域ですが、他のセクターもそれぞれ固有のファンダメンタルズに基づいて推移しています。そのため、発行体やセクター、ポートフォリオ全体の観点からリスクを見極めることが、これまで以上に重要となっています。

格付けの動向についても注視する必要があります。CCC格への格下げの割合やその動向は、市場全体の信用が大幅に悪化していることを示唆するものではありません。しかし、こうした変化はマネジャーの柔軟性やポートフォリオ構築に影響を及ぼす可能性があります。特に、信用力の低い銘柄が表面化しやすい既発CLOにおいては、その影響を慎重に見極める必要があります。  

テクニカル要因:サポーティブではあるものの、ばらつきが見られる

需給面も総じて良好な状況が続いています。機関投資家やCLO ETFからの安定的な資金流入が市場を支えており、CLO ETFには年初来で100億米ドル超の資金が流入しています。また、マネージャーは負債コストの引き下げ、既存案件の延長、エクイティのリターン改善を目的として、リプライシングやリセットを積極的に実施しています。一方で、新規発行については概ね規律ある姿勢が維持されており、裁定環境が厳しい中で無理に新規案件を組成する動きは限定的となっています。  

CLO ETF の資金流出入の推移(100万米ドル)

CLO ETF Flows ($millions)出所: Bank of America Factbook 2026年6月30日現在

こうした動きは市場を下支えする要因となっている一方で、投資家が評価する投資機会の質も変化しています。実質的な新規CLOの組成が限定的であるため、投資家は新たに組成された案件よりも既発CLOを検討するケースが増えており、その結果、裏付けとなるローンの評価がこれまで以上に重要になっています。  

また、今後の需要動向は規制の変更に左右されると考えられます。

  • 米国では、全米保険監督官協会(NAIC)が最終決定したリスクベース資本(RBC)フレームワークにより、特に保険会社の投資家を中心に、AAA格からA格のCLOトランシェへの需要が下支えされると見込まれています。一方で、BBB格以下の劣後トランシェについては、相対的に不利な資本規制上の取り扱いとなる可能性があります。
  • 欧州では、ソルベンシーII関連の規制変更が、シニアトランシェへの需要を押し上げる要因となる可能性があります。

今後数ヶ月にわたり、格付機関の評価手法の変更も市場に影響を与える可能性があります。FitchおよびMoody'sCLOの格付手法の見直しを提案しており、これが実施された場合、相当数のCLOトランシェで格上げが発生する可能性があります。その結果、投資家は格付遷移(レーティング・マイグレーション)や市場における相対価値を従来以上に慎重に評価する必要があり、投資判断はさらに複雑になると考えられます。

資本構造全体における投資機会

最も魅力のある投資機会は、依然として資本構造のクオリティの高い領域に集中しています。

  • AAA格からA格のトランシェは、強固な構造的保護およびシニア担保付ローンへの分散されたエクスポージャーに下支えされ、引き続き魅力的なリスク調整後リターンを提供しています。
  • 特に、元本保全や流動性、インカム収益を重視する投資家にとって、これらのトランシェは引き続き魅力的な投資機会を提供していると見ています。スプレッドは縮小しているものの、マクロ経済やクレジット市場を取り巻く不透明感が依然として高い環境下では、その相対的な投資魅力はむしろ高まっているとみられます。

短い残存期間を有するリファイナンス案件は、有望な投資機会となる場合があります。特に、長期案件と同等のスプレッドを享受しつつ、将来的な担保資産の劣化リスクへのエクスポージャーを抑えられる案件は相対的に魅力的と考えられます。これは、近年活発化しているリファイナンスやリセットにより、多くのシーズンド案件が再び市場に供給されていることとも整合的です。一方で、投資判断においては慎重な選別が不可欠です。スプレッドの高さだけではなく、担保ローン・ポートフォリオの質や構成を十分に分析し、負っているリスクに見合うリターンが期待できるかを評価することが重要です。

メザニントランシェには、より選別的な投資機会が存在します。

  • 一部のBB格にも魅力的な投資機会が存在すると考えています。特に、信用力の低い銘柄やテールリスクへのエクスポージャーが限定的で、より質の高い裏付け資産ポートフォリオを有する案件には投資妙味があると見ています。
  • 一方で、発行から時間が経過したBB格トランシェについては、相対的にリスクが高い場合があります。特に、再投資期間が終了している案件や、上乗せスプレッドが限定的な案件、あるいは市場価値ベースで十分な信用補完が確保されていない案件については、慎重な分析が必要です。

格付け別スプレッド

Spreads by Rating出所: JPM CLOIE 2026年6月30日現在

その他注目すべき領域

欧州市場に引き続き魅力的な投資機会が存在すると考えています。欧州のCLOは、米国CLOと比較してスプレッド・プレミアムを維持しているほか、格付けの低いトランシェにおいても相対的に安定したパフォーマンスを示してきました。その背景には、ソフトウェア関連エクスポージャーが比較的限定的であることに加え、規制環境の変化にる追い風あります。もっとも、足元の個別クレジット事例が示すように、欧州CLOの投資魅力は単にスプレッド水準だけで説明できるものではありません。ポートフォリオの構成やマネージャーの運用は、引き続き重要な評価要素となっています。

プライベート・クレジットCLOも高いレジリエンスを示しています。事業開発会社(BDC)からの資金流出や、プライベート・クレジット市場全体に対する監視強化への懸念があるなかでも、新規発行は継続しており、市場は欧州を中心に着実に拡大しています。足元では案件ごとの相対価値にばらつきが見られるものの、慎重な分析と銘柄選別を行う投資家にとっては、引き続き魅力的な投資機会が存在すると考えています。

今後の見通し

CLO市場を取り巻く環境は引き続き良好です。強固な投資需要や比較的安定したクレジット環境を背景に、資本構造全体を通じて魅力的なインカム機会が提供されています。しかしながら、セクター、発行体、および担保ローン・ポートフォリオ間でのパフォーマンス格差は拡大しており、投資家が得る成果にはこれまで以上に大きな差が生じる可能性があります。

このような環境下では、慎重なポジショニングが超過収益の源泉になると考えています。具体的には、より高格付けのトランシェ、質の高い担保資産で構成されたポートフォリオ、そして潜在的なリスクを早期に見極める能力を有するマネージャーを選好することが重要です。

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Headshot of Melissa Ricco smiling at the camera.

Melissa Ricco (メリッサ・リッコ)

ストラクチャード・クレジット責任者

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